文 林 通 信

La première qualité du style, c'est la clarté. Aristote

ずた袋 と つれづれ詩

独身でも既婚でも子どもがいても、仕事があってもなくても、どんなにすぐれた羨ましい境遇でも、すぐれていない境遇であっても、すべての人が例外なく、それぞれに、言葉にならないほど重たいずた袋を、孤独に引きずって歩いている。それはほとんどの場合、…

ある朝のしずけさ

ねぎと生姜の炒めたものに、豆乳をそそぎ、あたため、 わたしはちいさなキウイを、刃(は)がギザギザになっている小型ナイフで 半分に切り、青い柄(え)のついた大きなスプーンで すくってたべる まん中下の軸にひっかかる スプーンですくえない果実の中央 わ…

「豪奢である」とは、何か

「豪奢である」とは、何でしょうか。好きなものを思う存分もつことができ、贅沢できるということ。そのめぐまれた特異な環境、地位、身分ー。 物質的な過剰さにたいして、多くのひとは蔑みとあこがれという相反する感情を本能的に抱くのではないでしょうか。…

Musée Jacquemart-André その2

螺旋階段、植物、石像でできた奇妙な楽園 ひかりのもとへ、あらんことを 階段の上から、下から、気づかぬうちに誰かが見ている 絵画とともに、受難へのみちびき 石像や絵画、そして階段までもが、言葉を発せずに、なにかを語りかけてくる。エッケ・ホモ、こ…

Musée Jacquemart-André その1

もとはジャックマールアンドレとかいう資産家かなにかの個人邸宅で、かれはイタリア宗教画のコレクターだったとか。 詳しくは知らないが、その実にみごとな建築様式および室内様式にはぐうの音もでなかった。 玄関先のお庭からしてエステティック お茶できま…

シャオチンの場合

「祖国に戻ったって、残された道はひとつだけ。与えられた仕事をして稼いで、好きなものを買うだけ。それならこっちで、思う存分に挑戦した方がずっといい!!」 これは中国からパリにやってきた、シャオチンのことばだ。私たちはパリカトリック大学で同じ講…

プルタルコスの森

Les buveurs, après avoir étanché leur soif, s’amusent à regarder les ciselures qui ornent le bas des coupes et les retournent à dessein. De même, lorsque notre apprenti sera repu d’idées philosophiques, il pourra reprendre haleine : on lui…

一枚の膜のうしろを覗きこむ

わたしたちは、考えなければならないだろう 一枚の写真の、一つの文章の奥にあるものを 感じとらねばならないだろう そんな訳で、何がなんでもむしゃくしゃ写真を撮って おさめればよい、という話ではないという気がしてきた わたしの中には、ルポルタージュ…

Dieter Roth

エクテ・アンコール

森のなかを、歩く。黄緑色の涙を流しながら。 子供を抱き、あやすときにはその子の耳に寄り添い、老師を愛し、そのことばをよく聴くようおどけて話したものだ。その子は大人になり、温かさを求めて青い光のなかへと飛び立った。あれ以来、彼が戻ることは二度…

つれづれ街歩き

Bioは、ものすごく人気だ 本当においしいワインにはフロマージュとソシソンが欠かせない チキンは黄色いほうがbioに近い なぜならトウモロコシを食べた証拠だから 黄色くないのは、人工のエサで育てられた可能性もある それも一概には、決めつけられないが …

Vitra

日本風とヨーロッパ風の融合がモダンと見做される ヨーロッパに巻き起こる、Vitra旋風 椅子の、座りごこちのよさ 二行目左の赤い空間を除いてすべて、パリのVitra officeの写真。個人的には、パリのアパルトマンには、すこしデコラティフすぎるインテリアな…

植物とシネマ

成瀬をこれぞとばかりに、見る

まいにち、雨

このあいだまであった夏の日々 ここ最近は、まいにちが雨 雨がやむと、秋晴れ。学校にて

群青とひかりの街

たわわに実るノクターン よく通う本屋Compagnie よるはべつの姿 都市生活は、ひかりのなかに

つれづれ日記

マルシェで買ったバジル。むしがいて大変な始末に。 ふだんのサラダには必ずフルーツ入れる/星つきアップルタルト エクリチュールとフルーツ

あめの日

神さまのノート

世界のひみつはすべて、 神さまのノートのなかにあるとしたらーーー。 教会は、きょうも生と死をつかさどる。 生まれたとき、赤子は洗礼を受ける。 天に召されたとき、葬いの儀式がおこなわれる。 祭壇に向かう中央の通路には、数えきれないほどの新生児と死…

au-delà

出来ごとは、ときに人の心を翻弄し戸惑わせるけれどもすべてが人の知性でもって解決できるわけではない この限られた世界のなかに無限の時の流れが横たわっていてそれに決して抗うことができないのと同じこと そんな時には「待つこと」が最大の努めとなる 砂…

「レバノン 現実とフィクション」展

アラブ世界研究所「レバノン 現実とフィクション」展 « Liban Réalités & Fictions » à Institut du Monde Arabe レバノンで生きる女性たち : 消せない戦争の傷跡と現在 ・レバノンの内戦はかれらの心に深い痕跡を残し、かれらの「今/現実/現在」はその大き…

ジェラルドとクリスティーヌ

映画のコンフェランスでスイスのバーゼルに滞在しました。物価の高さで有名なスイス。なんと、フランスの一般内科医とスイスのレジ打ちの仕事は同じ年収なのです。したがってスイスの人はしばしば、国境を越えて買いものをしに行きます。 うつくしいバーゼル…

ベルリン・天使の詩

ベルリン・天使の詩(1987) Der Himmel über Berlin/Wings of Desire by Wim Wendersベルリンの壁崩壊からちょうど三十年。平成元年生まれの私たちはちょうど三十歳。 こんな素晴らしい作品を観たあとでは、どんな言葉も追いつかない。今まで観たどんな映画…

自己紹介

はじめまして。pommeligneと申します。一年間のフランス滞在をきっかけに、ブログをはじめました。 日常的な出来ごとや、おもしろい職業、さまざまな人々、はたまた映画や本の感想から、個人的な文章にいたるまで自由に書き連ねていきたいと思います。 名前…